2000年には初の試みとして「鑑賞にとどまらない」企画が盛り込まれます。演劇体験講座や特殊美術ワークショップ(WS)、親子パントマイムWS、その他公開稽古や展示等が組まれ、企画への熱量の高さと演劇を外へ開いていこうとする意図が伺えます。
2001年は開催案内に「演劇を観て楽しむ。実際に自分も体験する。感じ、創造し、表現する楽しさを存分に味わえる場所」と書かれているように、「演劇は初めて」という人も一緒に楽しめるよう、WSの内容もグレードアップ。初となるボランティアスタッフの募集も行い6名が運営に参加したほか、フェスティバル参加者や講師、一般参加者による交流会も初開催されました。
2002年は改修工事で休館している中、札幌芸術の森でWSによる市民参加型のフェスティバルを開催。2003〜2004年は子どもから大人まで、演劇初心者から経験者までを対象にWSのさらなる充実が図られ、オープニングやフィナーレはオリジナリティあふれるコンテンツで構成されるように。
[世の中の出来事]
複数劇団による小ホール公演と、演劇初心者から経験者までを対象にしたWSというプログラム構成がある程度確立する中、2005年には5人の演出家がそれぞれWSで作った小作品を発表する新企画が登場。フィナーレイベントのコンテンツとして大ホールで発表公演を行うもので、WSの目玉企画の一つとして翌年以降も継続していきます。2006年、2007年とWSの内容がさらに充実していくにつれて参加者数も増加し、同時に小ホール公演の入場者総数も順調に伸びていきます。
そうして20回目を迎えた2008年、定着していたプログラム構成に変化が現れ、初の「短編演劇祭」が産声をあげます。フィナーレ企画の一環として位置付けられた「短編演劇(プチ)祭」は、大ホール舞台上に客席を設置した特殊な形式での開催で、「Real I’s Production」、「TBGS」、「劇団怪獣無法地帯+3ペェ団札幌」の3団体が出演。2009年は初代チャンピオンの「劇団怪獣無法地帯+3ペェ団札幌」に挑む形で、公募による8チームが競演。演フェスの新たな目玉企画としての地位を確立します。
[世の中の出来事]
「札幌の演劇の振興と市民への普及を目的とし、地元演劇人による実行委員会と協力しながら、約1カ月にわたりさまざまな企画を通して演劇の魅力を伝える演劇祭」として着実に成長してきた演フェス。趣向を凝らしたWS、小ホール公演、そして主要企画となった短編演劇祭という構成で、札幌の夏の風物詩に。
短編演劇祭は年ごとの作品テーマが設定され、2日間3ブロック(予選A・B+決勝)形態での実施が定番化。2010年は予選ブロック勝ち抜き2団体、敗者復活1団体、前年度優勝団体の4団体が決勝で競い合い、優勝団体には特典として、愛知県長久手市で毎年開催されている演劇祭「劇王」への参加資格が与えられました。
2011年度以降は、予選ブロック勝ち抜き2団体、「劇王」優勝劇団、前年度優勝団体の4団体が決勝で競い合う形へと進化。「劇王」と優勝者を互いに招聘し合うことで、地域を越えたイベント間の交流が生まれ、拡がりを見せていきます。
[世の中の出来事]
教文短編演劇祭の認知度が全国的に高まっていくにつれて、2015年以降は道外からの応募も少しずつ増加。地元劇団にとっては、道外の短編演劇祭への出場権という優勝特典と合わせて、演フェスが劇団同士の地域を越えた交流の場になると同時に、道外公演の機会を得る貴重な場としても機能していきます。そうして短編演劇祭は2017年に10周年を迎えますが、集客や付加価値についてなど解決すべき課題も抱えていました。
2018年には、次の10年間を見据えて仕組みを大きく変更。短編演劇祭の他に、過去の優勝劇団が出品作を再演する「GRAND CHAMPION STAGE」を企画し、チケットが各作品ともに完売(短編演劇祭が始まって以来、チケット完売は初)するほどの注目を集めます。残念ながら、この年の9月に起きた北海道胆振東部地震の影響で、短編演劇祭と「GRAND CHAMPION STAGE」は一旦開催中止に。それでも「演劇の力で活気を取り戻そう」と協議を重ね、多くの方のご支援も受け、同年11月に大ホールでの「GRAND CHAMPION STAGE」開催を実現し、大きな話題を呼びました。
2019年も短編演劇祭を大ホールで開催。前日にはプレイベントとして入場無料の前夜祭を行うなど、新しい演フェスの形が生まれます。
[世の中の出来事]
2020年に始まった新型コロナウイルス感染症の世界的な流行に伴い、生活様式は一変。演劇を含め、さまざまなイベントが中止を余儀なくされます。2022年現在においても、刻々と変化する感染状況によっては、中止や延期の判断をせざるを得ない状況が続いています。
1985年から形を変えつつ継続してきた演フェスもまた、新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、2020年以降その歩みが止まっておりましたが、2022年9月、遂に3年振りの開催を迎えました。コロナ禍での開催ということで、これまでのような様々なワークショップは行わず、短編演劇祭のみの開催となりましたが、道内外の団体が20分の短編作品でしのぎを削り、優勝を勝ち取ったのは2019年に引き続き名古屋の空宙空地。大変な盛り上がりを見せながらで無事に終演しました。
当館は2023年1月から大規模改修工事に入るため、長期休館となります。新型コロナウイルス感染症の収束の兆しが見えず、長期休館も迫る中、どのように再スタートを切るのか。演フェスは再び新しい局面を迎えています。
[世の中の出来事]